はじめての課長の教科書 [book]

はじめての課長の教科書 / 酒井穣 (著)

はじめての課長の教科書

タイトルの「はじめての」は課長と教科書の両方にかかっているようです。

つまり、「はじめて」課長になる (ことを目指す) 人向けの教科書、という意味と、課長について述べた「はじめて」の教科書という意味がありそうです。

特に、課長の定義を解説した第1章が本書のキモです。
「課長」に焦点を当て、「課長とは何か」を述べています。
課長と係長や部長の違いなどを挙げ、課長とはどういうポジションなのか、課長は何をすべきなのかが明確になります。

第2章以降は、他のビジネス書でよく見るような内容になっています。


以下、読書メモ。

pp.21-22

課長の重要な特徴としては、課長は「予算管理に実質的な責任を持つ管理職」という枠の中では最も下位にある存在であることが挙げられます。


p.22

さらに、課長は部下の業績や能力を評価すること (査定) が正式に認められている最下位のポジションであるのが普通です。


p.23

係長は、課長のような正式な管理職ではありません。管理職である課長と仕事内容には相当な開きがあります。そのため、ビジネスマンとしては、係長から課長に出世できるかどうかがキャリア形成における一つの大きな山です。


pp.24-25

直接の人事権が及ぶ範囲 (普段の仕事ぶりを見ている部下の人数) は、課長のほうが部長よりも圧倒的に多いものです。部下の年齢層は、課長の部下は二十〜五十代と非常に広範囲にばらついているのに対して、部長のそれは三十代後半〜四十代でだいたい安定しているというのが一般的です。
課長の部下はエース級の人材も問題社員も玉石混交であり、ベテラン係長などもいるので勤続年数にも大きなばらつきがあります。これに対して、部長の部下である課長は、そもそもがエース級の人材のみであり、基本的には粒ぞろいです。


p.26

あえて課長にはない部長の難しさを挙げるとすれば、それは、部長は「自分の専門外の知識を持った部下」を管理監督しなければならない、ということに尽きるでしょう。
現場の知識では、部長は課長にまったく歯が立たないのですから、基本的には「責任は俺が取るから、あとは自由にやれ」というスタンスが、部長が課長を導くときの管理手法の主流になります。


p.30

課長として最も大切な仕事は「部下のモチベーションを管理する」という仕事です。


p.32

部下が「自分は会社に大切にされている」という実感を持って仕事に取り組めるかどうかという点が最も重要です。


p.32

お金よりも大切なのは、部下を一人の人間として気にかけ、能力だけでなく、もっと人間性に興味を示してやるということなのです。


p.46

いわゆる「風通しの良い企業」というのは、より多くの情報が流れる組織のことです。「フィルタリングによる情報量の減少が少ない組織」と考えてもいいでしょう。
「風通しの良い企業」では、現場情報も経営者情報も相互にたくさん飛び回っており、役職にあまり関わりなく社員の皆が同じぐらいの量の情報を持っています。このため社内での意思の疎通は比較的簡単ですが、個々人の情報処理の量は増えることになります。


p.47

誰にも処理できる情報の量には限りがありますから「風通しの良い企業」においては、「情報の洪水の中から、自分お必要な情報だけを抜き出す」という情報のフィルタリングが個人個人に課されているというように理解することができます。


p.55

中間管理職は、部下にルーティン・ワークを徹底的に教え込み、ルーティン・ワークから外れる例外を、すばやく発見できる仕組みを作り上げることが仕事の第一歩です。


p.127

「社内政治」という言葉には、ネガティブな印象を持つ人が多いのですが、基本的に人間が三人以上集まっている集団において、政治が発生しないなんてことはありません。