突破する力 [book]

突破する力 / 猪瀬 直樹 (著)

突破する力


ビジネスマンとしてのベースとなる考え方や、知っておくと役に立ちそうなコツが、具体的に書かれています。
例えば、仕事への取り組み方、評価されるための方法、上司とのつきあい方など、


即、実践で使えるようなノウハウではありませんが、土台を固めるのに役に立ちそうな内容になっています。


ビジネスマンとしてのベースとなる考え方や心構えが、わかりやすく述べられています。
他書でも述べられているような、普遍の原則的なものも多々ありますが、読んでいると、上司である猪瀬さんが、部下である読者に、ビジネスについての考え方やノウハウを、手ほどきしている感覚を受け、すぅっと入ってきます。
本書で述べられていることを、常に意識して働くことで、長期的な視点で見ると、じわじわ効いてきそうな気がしました。

また、評価されるための方法、上司への報告の仕方、プレゼンで上がらない方法など、即、実践で使えそうなものもあります。

pp.79-80
自分にふさわしい役割を知りたいなら、「自分は○○に強みがあります。会社の中で、どのように活かしたらいいですか」と投げかけるべき。具体的に中身を提示すれば、上司もそれにあった役割を具体的にアドバイスしてくれます。

や、

p.64
納得できないなら、「部長は先日、○○とおっしゃった。しかし、いまは××と言う。○○のほうが、△点という店でメリットがある。とても納得できません!」と具体的に筋道を立ててぶつけてみる。そうすることで、気持ちは的確に伝わります。


などは、そんな物わかりのいい上司ばかりじゃないよ、と言いたくなりますが、そこは、

p.37
壁にぶち当たったら別の方法を考え、また行き詰まったら、さらに他の方法を試してみる。その繰り返しこそが、新しい道を拓きます。


ということでしょうか。

やや根性論的な感じもしますが、ラクして成功する方法はないわけです。


新書ですが、充実した内容になっています。

以下、読書メモ。

p.5

孤独を友として仕事と向き合った時間は、けっして自分を裏切らない。ギリギリまで自分を追い込めば仕事力が磨かれて、それが閉塞状況を打ち破る武器になる。


p.24

思いがけない発見や気づきというのはたいてい、うまくいかずに試行錯誤し、煮詰まった最後の最後にふと浮かんできたりするものです。


pp.26-27

そもそも不調には二つの種類があります。それを見極めて対処することが、そこから早く抜け出すコツです。
一つは自分に原因がある不調です。この場合は、とにかく試行錯誤するしかない。福岡ソフトバンクホークス元監督の王貞治は、現役時代、打撃不振に陥ると、部屋の畳がすり切れるほど素振りを繰り返しました。世界の王と呼ばれた選手でさえ必死にやるんだから、普通の人なら、その何倍も必死にならなくちゃいけないのは当然です。
一方、よく分析してみると、外部環境の変化が不調の原因になっていることもあります。
~略~
ビジネスは自分一人でできるものではないのだから、むしろ不調の原因は外部にある場合がほとんど。それなのに冷静に原因を分析できず、自分を責めてしまうから、モチベーションが下がったり空回りして、余計に事態を悪化させることになるんです。~略~それと同じように、じっと我慢して晴れ間が広がるのを待てばいい。
やまない雨がないように、風向きもいつかは必ず変わります。大切なのは、逆風がやんだときに、ふたたび前に向かって歩くための準備ができているかどうかです。


p.30

では、どうして成長を実感できないのか。それは周りから評価を受けていないからでしょう。自分では昨年よりいい仕事ができたと思っても、上司や会社がそれを評価してくれない。そこで自信を失い、心が折れてしまう。
しかし、それを周りのせいにしているうちは何も変わりません。むしろ、いい仕事をすれば世間が勝手に評価してくれるという考えが甘い。


p.31

前回よりおもしろい企画を思いついたら、積極的に上司に提案する。前回と違うアプローチで面談に臨んで成功したら、ノウハウ化して部下に教えてあげる。


p.37

何か問題が発生して、このままでは目標を達成できない状況になると、「問題があるから仕方がない」と言って開き直る。
上司に企画を却下されると、練り直して再提案するのではなく、企画そのものをあきらめてしまう。これではいつまでたっても前には進めません。頭が悪いから、いくら考えてもムリ?

それは間違いです。問題を解決する思考力は、頭の善し悪しではなく、頭の持久力で決まります。斬新な発想がなくてもいい。壁にぶち当たったら別の方法を考え、また行き詰まったら、さらに他の方法を試してみる。その繰り返しこそが、新しい道を拓きます。


p.42

「評価しないのは周りが悪い」と自己満足の世界に浸っていると、評価はますます下落していきます。ここで考えなくてはいけないのは、「評価してもらう」という受け身の姿勢から、「評価させる」戦略への転換です。


p.54

自己投資したくてもお金がない?だったら、時間コストを払えばいいんです。投資は何もお金だけに限りません。時間という資源は見逃しがちですが、自分の時間を使って頭に汗をかくことも立派な投資なんですよ。土日にのんびり寝てるヒマがあるなら、本の一冊でも読まなくちゃ。


p.55

お金や時間を自分に投資しても、すぐにはその効果が表れないかもしれないし、無駄が多いように思えるかもしれない。でも、投資を続けている人とそうでない人では、10年後、20年後の仕事の質、収入に大きな差が出てくる。これは間違いありません。
逆に言えば、いま他の人と貯蓄に差があったって気にする必要はないんです。そんな小さな差は、人生という長いスパンの中で見れば微々たるもの。大切なのは、目先の収支にとらわれずに、いかに自分の可能性に投資できるかということですよ。


p.58

先ほどの実験で、被験者以外を全員、間違いを答えるサクラにした場合、誤答率は36.8%でした。ところが正解を答えるサクラを1人入れると、誤答率は約25%に減少。つまり、自分の考えに同意する人が1人でもいると、空気の支配力はグッと弱まるのです。


pp58-59

ただし、ここで注意すべきは味方の作り方。1人目の味方は、論理とデータで説得していくべきです。1対多数の場合は空気にはね返されてしまうことがありますが、1対1では、論理とデータで攻めたほうが相手を納得させやすいのです。


p.64

ビジネスの場面で的確に感情を伝えるには、「なぜそう感じたのか」根拠を示しながら話すと効果的です。
たとえば上司からムリな指示をされたときに、イヤだという顔をしてしぶしぶ従いながら、上司がいなくなった瞬間、「ムカつく」と呟いていませんか?それは幼稚な感情表現にすぎません。納得できないなら、「部長は先日、○○とおっしゃった。しかし、いまは××と言う。○○のほうが、△点という店でメリットがある。とても納得できません!」と具体的に筋道を立ててぶつけてみる。そうすることで、気持ちは的確に伝わります。


p.67

どんな優秀な人でも、ミスを犯すことはあります。が、実力が問われるのは、そのあとの対応です。ただ「すみません」と謝るだけの人は三流。セカンドベストでその場をしのごうとするのは二流。全体を見渡して、最善の策を講じられるのが一流です。


p.69

実際、誰にでも問題解決力は備わっているのです。試しに、これまでに自分が乗り越えてきた小さなピンチをすべて紙に書き出してみてください。たとえば財布を落としたとか、パソコンのデータがぜんぶ消えたとか、そのときは絶体絶命だと感じた場面がいろいろと思い出せるはずです。
次に、それらの小さなピンチをどうやって切り抜けたのかを振り返ります。
すると、自分の中に問題解決力があるということに気づくとともに、ピンチを切り抜けたときの感覚が蘇ってきます。


pp.69-70

問題に立ち向かう感覚が戻ってきたら、今度は「悩んでいる自分」が主人公のドラマを思い描き、映画館のスクリーンに、ピンチのシーンが映し出されているところをイメージします。そして観客の立場から、この主人公にどういうアドバイスがふさわしいかと考えてみる。この作業をすると、問題を外から客観的に眺めることができ、具体的な解決策を導きやすくなります。


p.77

では、どうすれば代えのきかない人材になれるのか?ほとんどの人は、自分の長所を活かしてナンバーワンになろうとします。じつは、それが間違い。前にも述べたように、個性は長所から発想するのではなく、短所を見つめることで明確になるのです。
自分の長所は、わかるようでわからないもの。
~略~
一方、短所は明確でした。僕は昔から朝が弱く、午前中はいつもボーッとしていました。いくら努力しても、早起きできなかった。自分では直視したくなくても、これは紛れもない事実。この普遍の部分こそが、他の人とは違う個性なのです。
でも、短所がどうして強みにつながるのか、ピンとこない?
TODO


pp.79-80

自分にふさわしい役割を知りたいなら、「自分は○○に強みがあります。会社の中で、どのように活かしたらいいですか」と投げかけるべき。具体的に中身を提示すれば、上司もそれにあった役割を具体的にアドバイスしてくれます。


p.84

では、小が大に勝つにはどうすればいいのか。それは、データと論理を武器にして、相手の弱点を一点集中で攻めることです。
データと論理で攻めれば、相手の人数は関係なくなる。正しいか正しくないか、勝負を決めるのはそれしかないんだから。


p.86

自分の土俵、つまり自分が得意とするところで仕掛けないといけません。
また、会社の規模やシェアのうえで劣勢の場合は、「1対大勢」ではなく、「1対1」の局面に持ち込むことが大事です。コンペでライバル企業が圧倒的に有利な状況にあっても、取引先の担当者と1対1の関係で自分が優位な関係を築ければ勝算はある。


p.97

ダラダラと説明するのは、相手の貴重な時間を奪うことと同じ。ビジネスでは結論から報告するのが原則で、枝葉末節は上司に求められたときだけ報告すればいい。


p.98

そこで僕がスタッフに実践させているのが、CMと同じ15秒の報告です。15秒は短いようで意外に長く、「誰が何をした」「何がどうなった」という情報なら、三~四つは入れ込めます。


p.98

上司への報告でさらに心がけたいのは、相手のメリットを意識して話すことです。
状況説明だけで満足している人をよく見かけますが、それでは上司は動いてくれません。もし商談の報告をするなら、「売上5000万円の大型案件ですから、部のノルマもこれで一気に達成ですね」と、つけ加えてみましょう。
相手の利益になるフレーズを話に入れ込めば、アドバイスをくれたり、次回は商談に同行してくれるかもしれません。仕事のデキる人は、こうした話し方で上司を動かしているのです。


p.99

電話での話し方にも工夫が必要です。電話の対応で「ええ、……はい、……はい」と、ひたすら相槌を打つ人はダメ。電話では、相手の発言をそのまま復唱すべきです。
復唱には二つの意味があります。一つは、周りにいる他の社員に内容を聞かせるため。~略~
もう一つは発言内容の確認です。とはいえ、相手の言葉を繰り返して確認するだけなら留守番電話でもできる。大切なのは、復唱の合間に5W1H (いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように) の質問を挟み、詳細を確認すること。


pp.100-101

では、どうして緊張しているのにスラスラと話せるのか。それは、参加者全員ではなく、その中の2割を相手に話しているからです。場の空気を作るのは、参加者の2割。残りの8割は付和雷同で、2割を味方につければ、あとは雪崩を打ったように賛成に回ります。そう考えれば、8割の反応が悪くても焦らずにすみます。


pp.127-128

たとえば会社で同僚と会ったとき、きちんと挨拶できているだろうか。あるいは机の上は整頓されているだろうか?
そんなこと、仕事には関係ない。成果主義だから結果さえ残せばいいんだ、というのは大間違い。仕事の結果を左右するのは、じつは日頃の小さな言動や立ち振る舞いにかかっているんです。


p.128

見た目にいい派手な部分ばかりに気を取られて、足元の基本的なことをないがしろにしてはダメ。大きな結果が残せる人は、細かいところにもきちんと緊張感を持って取り組んでいます。


p.132

部下に教えるべきことは、技術や考え方以上に仕事のおもしろさだと僕は思っています。
ただ、それを伝えるためには、自分が仕事を楽しんでいないとウソになります。


pp.134-135

そこで先生は緊張して、右向け右の命令がかかったときにひとりだけ左を向いてしまった。面接試験でそこを突かれた。正直に「間違えたのであります!」と謝ったものの、重要な場面での大失態。自分は不合格だと思い込み、すっかり落ち込んだそうです。ところが、結果は合格。あとで上官に尋ねたところ、「君は言い訳をしなかったから合格したんだ」と言われたとか。
この話を読んで僕は合点がいきました。戦場でのミスは命取りです。ミスの言い訳をして失敗の責任逃れをするような人に、大切な兵の命を預けるわけにはいきません。
人生も同じです。たとえ失敗しても、言い訳をせずに真正面から責任を引き受けてこそ、頼られる存在になる。


p.135

相手から信頼されるかどうかは、失敗そのものより、その後の態度です。


pp.135-136

では逆に、信用できる人をどうやって見抜けばいいのか。僕が意識して見るのは相手の表情です。いつもニコニコしている人は要注意です。人間は楽しいときに笑い、腹を立ててれば怒るもの。時と場合によって表情が変化するのが普通です。
ところが、いつでも笑顔の人は表情が豊かなように見えて、じつは表情がない。


p.146

では、優秀なビスになるにはどうすればいいか?

まず大切なのは、周りの影響を受けやすい上司に、先手を打って数字を報告することです。プロジェクトの方向性が間違っていないのなら、それを裏づける数字が必ずどこかに表れています。たとえば売り上げがまだ出ていなくても、「バイヤーからの問い合わせが○件増えた」「このエリアではシェア1位になった」というように、目標達成の兆しになるデータがあるはずです。
それらを活用して上司の不安を取り除いてやれば、そう簡単に揺るがなくなります。


pp.152-153

いずれにしても、トップは会社の鍵。ルールがよくわからなければ、まずトップを見る。それによって職場で大切にすべきものも見えてくるはずです。
ここまで職場になじむ方法をいろいろと紹介してきましたが、もっとも有効な方法が一つあります。それはいち早く結果を出すこと。
多くの人はまず職場になじみ、協力してもらえる態勢を整えてから、結果を出そうとします。しかし、本来は逆。結果を出す人材だからこそ、周りも力を貸してくれるのです。しばらく様子見をして、1年間かけて結果を出そうという考えは甘い。様子見している間に、周りはあなたに見切りをつけます。
勝負は最初の1週間から1か月。その間に売り上げでも企画の提案でも、とにかく形のあるものを一発打ち上げて、自分の実力を知ってもらう。それが協力を取りつける最善の方法です。


p.163

一方、デキる人はたいてい「みんなの役に立ちたい」とか「社会に貢献したい」という意識を持っているものです。


pp.172-173

タブーの根源には、紙や自然といった超越的な存在への畏れがあります。わかりやすく言うなら、「お天道様が見ている」という感覚です。
それが失われると "なんでもあり" の混沌とした社会になってしまう。
どうしてこんな話をしたのか。それはビジネスにも畏れの感覚が不可欠だからです。
畏れを失うと、あとで必ずしっぺ返しがきます。


p.173

いくら競争が激しく、追い詰められた状況に陥っても、「自分に誇れる仕事をする」という意識だけは忘れてはいけません。


pp.174-175

こうした職業倫理は、サラリーマンにとっても大切です。報酬を意識しながら仕事をすると、「もう給料分は働いたから、このくらいで切り上げよう」という発想になりがちです。
ですから、いったん給料のことは脇に置き、目の前の仕事に全エネルギーを注いでみてください。
不況でみんなのテンションが下がっているいまは、むしろチャンスです。みんなが「給料分でいいか」という、そこそこの仕事で満足しているときに、「そこまでやるか!」と給料以上の働きをすれば、必ず評価されます。


p.176

断ることが本当に自分のためになるのか、もう一度よく考える必要があります。会社や上司の期待を無碍にすれば、それだけで信頼を失います。条件が悪い仕事を断る人は、条件のいい仕事も回ってこない。それが会社というものです。


pp.178-179

やってほしい作業は、過去の成功事例の洗い出しです。新規事業はゼロから構築するものだと考えがちですが、そんなことはありません。いま成功しているビジネスの多くは、既存のアイデアを取り込んで発展させているものがほとんど。他の業界のやり方を、自分の業界に応用したり、すでにあるAという方法とBという方法を組み合わせたり……。こう考えれば、これまでの自分の過去の成功体験や他業種の事例が参考になるはず。