この国を出よ [book]

この国を出よ / 大前 研一 (著), 柳井 正 (著)

この国を出よ

大前研一さん、ユニクロの柳井さんによるグローバル化への啓蒙書です。

政治、経済、人材などがすでにダメになって行きつつある日本にとどまっていないで、海外に目を向けよう、という内容になっています。

人間関係構築、英語を含むコミュニケーション能力、ビジネススキルなど様々な観点からグローバル化の必要性を説いています。

大きな視点では、例えば税制改革や教育方針についての国に対する提言や、ユニクロの海外進出を例に、企業がどうグローバル化すべきか、といったことが述べられています。

また、個人にフォーカスすると、国に頼っていないで自力で世界に通用する人材にならないと、グローバル化した時代の外国人の競争相手にはとうていかなわない、と警笛を鳴らしています。

どういった方法でスキルアップしていけばよいか、という具体的な解説はありませんが、大きな方向性を示す動機付け、または加速化として、モチベーションを上げさせられました。

が、しかし、海外への挑戦は普通の人にとってはかなり壁が高いと思います。
英語をある程度のレベルまで上げ、地頭力やコミュニケーション能力に勝る外国人と渡り合っていかなければなりません。

サッカーで例えると、Jリーグにとどまるか、海外リーグに挑戦するか。

Jリーグにとどまった場合、現在の収入を維持でき、レギュラーでそこそこ活躍できるであろう。

海外リーグに挑戦した場合、成功できれば自分のスキルも上がり知名度が上がり収入も増えます。
しかし、失敗すると試合には出られず、Jリーグに戻るにも元いた席は埋まっていて、仕方なく JFL やマイナーな海外チームに移籍せざるを得なくなり、当然収入も激減することになります。

そういうことを想像すると、海外挑戦は、リスクが高いと感じるのです。

結果が出せる/出せない、は、努力する/しないが大きく影響すると思いますが、向いている/向いていない、もある程度の条件ではないでしょうか。
世界と一生懸命戦って、お金も時間も消費して、結果負けてしまうと悲しいですよね。


と、いつものネガティブモードに入るのですが、こういう考え方になると言うことは、おそらく日本にとどまっていることのリスクを、本当には理解していないからでしょう。

実際に行動して肌で感じてやっと理解できるのかもしれません。
少なくともこのお二人は実際に行動して肌で感じていると思います。


ということで、ごちゃごちゃ考えている暇があったら、さっさとやろう、という結論に勝手に達しました。
行動力重要。

以下、読書メモ。

p.13

まして先の読めない今の時代は、あらゆる変化がリスクと言ってもいい。そんな中で安定を求めて現状維持に汲々としたり、リスクを恐れて何もしなかったりすることこそが一番の「リスク」なのです。


p.36

日本がバブル崩壊の後遺症に呻吟している間に、世界のマネーの流れは先進国から新興国へとドラスティックに変わり、日本の成長を支えてきた産業の国際競争力はかくも衰退してしまいました。もはや誰も日本に注目しない"ジャパン・パッシング" (日本素通り) が本格化しているのです。


p,41

その先に待っているのは、間違いなく「ハイパーインフレ」です。国は借金を減らすために、輪転機をフル回転させてお札の大増刷を行うからです。その結果、円の価値は瞬く間に下がり、金融機関に貯め置かれた預金はみるみる実質的な価値が目減りしていきます。タンス預金もほとんど意味がありません。このハイパーインフレに耐えられるのは、「金」や「不動産」「外国通貨」などだけでしょう。


p.43

すでにヘッジファンドが、日本国債が暴落したときに儲かるような仕掛けを準備し始めたという情報も流れています。


p.69

日本企業では、「失敗」というもっとも貴重な経験が共有されていない。だから、他の会社だけでなく、同じ会社の中でも別の事業部が同じ失敗をすることが多いのです。
例えば、日本企業では役に立つ「引き継ぎ」がほとんど行われていません。課長の机の中にあるものは、その課長が異動すると、そのまま次の机に持っていってしまいます。
会社組織には「コーポレート・メモリー (企業の記憶)」の蓄積が必要なのに、ほとんどの日本企業には、それがありません。


p.70

「コーポレート・メモリー」を非常に重視しているアメリカのエンジニアリング・建設大手のベクテルは、ひとつのプロジェクトが終わると、時間を費やして、「学んだこと」「取引してはいけない企業」「資材購入してはいけない企業」「使ってはいけない人々」などのさまざまなデータを集めて蓄積します。そうしておけば、将来、違う人間がプロジェクトを受注した際、そのデータを参考にしながら進めることができるので、失敗が少なくなるわけです。組織もこのようにすれば「大人」に成長していくのです。


p.93

ところで、僕は「サラリーマン」と「ビジネスマン」は違うと考えています。ビジネスマンは自ら考えて行動しますが、サラリーマンは上司から指示された仕事をこなすだけ。勝手に「自分の仕事はここまで」と境界線を決め、その範囲の業務だけをするのですが、それは本当の意味での「仕事」をしているとは言えないでしょう。本来、仕事とは顧客のために汗を流すものです。顧客と向き合うほどに新しい発見があり、やるべきことは次々と増えていくはずなのです。


p.109

ドラッカーの哲学の中でも、私がもっとも影響を受けたのは、「顧客の創造」というキーワードです。彼は、これこそが「企業の目的」であると説いています。
ビジネスに携わる人は皆、それなりに努力はしているでしょう。でも、その成果に対する評価を上司だけに求めてはいないでしょうか?もちろん上司の評価は必要ですが、どんなビジネスであっても、最終的な評価を下すのは顧客です。私は、ドラッカーの「顧客の創造」というキーワードを、自分の仕事を認めてくれる人、自分の仕事に対して喜んでお金を出してくれる顧客を 1人でも増やしてくことがビジネスの本質なのだ、という意味に解釈しました。


pp.111-112

「企業は、社会の公器である」
このドラッカーの言葉には、企業のあるべき姿が集約されています。顧客が望む新しい価値を提供し、社会によい変革をもたらし、雇用を創出し、従業員の自己実現を図る―――。ここから、自分は何をしたいのか、あるいは何をしなければならないのかが見えてくるのではないかと思います。お


p.122

人は、身近にいるロールモデル (模範、目標) に強い影響を受けるものです。例えば、先輩や上司の中で「こんなふうになりたい」と思える存在に出会うと、仕事ぶりをまねしたり、教えを請うようになったりします。


pp.151-152

また、同じキャンパスにいるのに、日本人の学生は彼らとはほとんど付き合おうとしないそうです。こんなことが続けば、日本に来た優秀なアジアやアフリカからの留学生は、間違いなく日本嫌いになるでしょう。彼らの多くは将来、母国で政治やビジネスなどの分野でセンタープレーヤーとして活躍する優秀な人間です。その時になって後悔しても遅いわけですが、一生「ホーム」で暮らせばいいと考えている日本人は、彼らと交流を持とうとしないのです。


p.199

夕張市では現在、市民サービスの大幅な低下、公共料金や市民税などの引き上げ、市職員の早期退職や給与削減などの行政改革が進行中です。再建に向け塗炭の苦しみを味わう夕張市こそ、明日の日本の姿なのです。