大前研一通信 2006年2月号 VOL.137 [book]
- 耐震強度偽装問題の元凶は建築基準法にあり / SAPIO 2005年12月28日/2006年1月5日号 (小学館)
批判は建築基準法に向けられるべき。日本のシステムでは建築確認申請から認可が下りるまで最低でも 20 日ぐらいかかる。シンガポールでは建築確認が CAD に対応しているためすぐに検査結果が出る。
さらに、建築基準法に適合していても必ずしも安全とはいえない。それは阪神淡路大地震や中越地震で明らか。しかも建築基準法があるせいで日本の建築費は他の先進国に比べて異常に高くなっている。世界で最も品質がよくて安いものを日本では使えない。外国製品がそのままでは基準を満たさない仕掛けになっている。ほぼ、国産メーカーの独占状態。
今回行政は偽装を見抜けず耐震強度偽装建築物が建ってしまった。着工前の建築確認を許可しただけでなく、建物が出来上がったときに査収は検収というプロセスがあり、消防署や保健所などが必ずチェックしているにもかからず。耐震設計のような専門的なことは行政が簡単に審査できるようなものではない。行政は建築物に対する許認可権限を放棄し、推奨事項(ガイドライン)にすべきである。そうすれば、エンジニアリングの検証作業ビジネスが立ち上がり、プロによるチェックが行われるようになる。
- 中流から滑り落ちたロウアーミドルクラス 4 割の衝撃 / SAPIO 2005年11月22日号 (小学館)
現在日本ではアッパーミドルクラス(年収600万〜1000万円)が減少し、ロウアーミドルクラス(同300万〜600万円)がマジョリティになっている。これまでの日本のサラリーマンは学校を卒業して社会に出た時はロウアーミドルクラスからスタートし、徐々に昇給・昇進して最後はアッパーミドルクラスとなってい引退するパターンが普通だった。ところが、社会構造のパラダイムシフトにより、そういう尻上がり人生は 6 割の日本人にとって、ほとんど不可能になった。
この雇用状況を政治で変えることは不可能。しかし、発想を転換すれば、政治にできることがある。580万円という世帯平均年収以下でもアッパーミドルクラスの生活の質を作ることだ。行政はすべての領域で「この国は誰のものなのか?」と問いかけて国民生活者という「主語」をはっきりさせること、そしてそして生活の質を上げてコストを下げること。それが年収580万円以下でもアッパーミドルクラスの生活ができる豊かな国造りにつながる。
- 社団法人岐阜県経済同友会 20 周年記念講演録『21世紀と日本経済〜日本企業の新たな挑戦』
読み応えがあります。2006年2月号で一番面白かったです。
これまで大前さんはライブドアについてたびたび言及していました。今回の粉飾決済についてどのような意見をお持ちなのか知りたかったが、 2006年2月号では間に合わなかったようで、それについての記事はありませんでした。次号に期待。