グーグル・アマゾン化する社会 [book]

グーグル・アマゾン化する社会 / 森 健 (著)

グーグル・アマゾン化する社会

趣旨は、ロングテール化するにより一極集中が強まるという主張 + 一般的な Web2.0 の説明。
世界のフラット化により一極集中するというのはこれまでの Web2.0 系の本とは視点がちょっと違っていておもしろいです。

以下、読書メモ。


情報は、そのチャンネルの多様さも含め、ひたすら膨張し広がっている。
にもかかわらず、現象としては「一極集中」的な動きが際立つようになっている。
千と千尋の神隠し、タイタニック、スカパー、R25 など。

売れているものがメディアに取り上げられることで注目度を増し、さらに売れるというスパイラル現象(ティッピングポイント、収穫逓増)が起き、一極集中へとひた走る。
そうした情報の流通環境を加速させている上で大きいのは、インターネットとくにウェブ。

Web2.0 の特徴はユーザー参加と、タグ。

Web2.0 を、ユーザーの力を借りるものと考えれば、グーグルとアマゾンほど Web2.0 的なサービスを提供している企業はない。すべてはユーザのためでもあり、自社のためでもある。

空間的、物理的な制約のないウェブでは、急速に一極集中が起きる。
その仕組みはスケールフリー・ネットワークで説明できる。

パーソナライゼーションはユーザーサイドにおける関心事の一極集中。

ウェブで B2C ビジネスが始まった直後から、ウェブの強みは「中抜き」にあると言われてきた。メーカーサイドや大手小売りが、直接ウェブでの販売を手がけるようになれば、中小小売りは厳しい。要は、在庫設備や営業力、宣伝力など、事業スケールによる体力差が、徐々に現れてきている。
ロングテールで成功したのは、もともとヘッドだったからということになる。

タグというかたちで、詳細な情報が格納されることで、より細かく、より精度の高い情報が、あふれていく。ウェブはより豊富な情報を蓄え、リクエストひとつで何でも提示される情報化社会が待ち受けている。ひいては、それらの情報によって人々の利便性は高まり、多くの多様な情報に触れることで、人も社会もより賢明になっていく。が、むしろ社会は、一極集中的な方向へとベクトルを向けている。

そう考えるには、二つの根拠がある。
ひとつは、パーソナライゼーションの目的が情報の拡散ではなく、絞り込みにあるということ。
SNS のようなパーソナライゼーションの進んだサイトには、大きな欠陥が隠されている。見知らぬものとの出会い-偶然性による情報や人の発見が、大幅に減る。

もうひとつは、多様化という現象そのもの。
ネット空間が果たして平等か。
一部の人々だけが発言し一般大衆の思考や行動を均一化するマスメディアと異なり、ネット空間の中では、皆平等に発言できるので個性が尊重されたようかが増していく、とよく言われる。しかし、ネット・コミュニティーを事実上少数の人々がリードし、大多数はそれに同調するということはないか。
事実上無限に情報が蓄えられるウェブでは、情報はいくらでもストックしておくことができ、その情報は常に閲覧できる状態におかれている。だが、現実は、そうした多様な情報すべてに目を通せる人などいない。
とりわけ膨大な量的スケールのタギングが進む Web2.0 下では、タグに取り入れなれる、キャッチーで直感的に理解可能な最大公約数的概念だけが共感を集め、多様性を象徴する少数意見は、ますます小さく分散化される可能性がある。

個々の意志決定をおこなった個人は自分の選択が強力なパターンに収まっていることに気づいていない。それでもパターンは存在している。
本人が、いかに周囲とは関係ない主体的な発想だと主張したとしても、とりわけウェブのような情報だけが流通するネットワーク空間においては、周囲との相互の影響は避けようがない。そうした情報のインタラクションを、常に意識していないと、その大きなアーキテクチャーの中で自らも影響を受けていることに、無自覚になってしまう。

ユーザ側が留意しなければいけないことは、スケールフリー・ネットワークによって一極集中が進む社会にあって、いかに多様性や異質性をくみ上げていくか。