「知」のソフトウェア [book]

「知」のソフトウェア / 立花 隆 (著)

「知」のソフトウェア


副題にあるとおり、「情報のインプット&アウトプット」について、考え方と具体的な方法が書かれています。

ただ、1984年の本であるため、具体的な方法については、時代を感じます。
とうじはやっとコンピュータを使えるようになってきた時期で、情報源は、新聞や雑誌であったし、情報整理にはスクラップやカードを使う例が示されています。

現在では、ネットでの情報収集や、PC での検索が当たり前となっているため、本書のやり方そのまま模倣する必要はありませんが、その考え方や基本的な部分は今でも十分通用すると思います。

p.236

最後にもう一度述べておくが、本書の内容を一言で要約すれば、自分で自分の方法論を早く発見しなさい」ということである。本書を含めて、人の方法論に惑わされてはならない。

とあるように、本書の内容を、自分で応用していくのがよいでしょう。


以下、読書メモ。


p.14

速読に必要なのは、ひとえに精神の集中である。


p.18

この二つのタイプのインプットとくらべると、目的先行型のほうが、無目的型よりはるかに能率が高い。私の場合は五倍から十倍は能率がちがうといってよいと思う。
一冊の本を楽しみながら読むなら、一日二冊がせいぜいだろう。しかし、特定の情報を求めて文献渉猟するとなったら、一日に十冊、二十冊の本にあたっていくということはさして困難ではない。


pp.18-19

ではどこが必要で、どこが必要でないかをどうやって見分けるか。何より重要なのは、自分が何を必要としているのかを明確に認識しておくことである。なんでもないことのようだが、これが一番重要なのである。それさえはっきり認識していれば、目次、小見出し、索引を活用すれば、だいたいの見当がつく。だいたいの見当で必要そうなページを開いてみて、今度は段落ごとに数行ずつ目を走らせてみれば、そこが必要かどうかの見当がつく。必要な部分に出会ったら、そこを精読する。


p.96

まず、よき入門書を手に入れるのが肝要である。よき入門書は、次の条件を満たしていなければならない。第一に、読みやすくわかりやすいこと。第二に、その世界の全体像が的確に伝えられていること。第三に、基礎概念、基礎的方法論などがきちんと整理されて提示されていること。第四に、さらに中級、上級に進むためには、どう学んでいけばよいか、何を読めばよいかが示されていることなどである。
入門書は大切だから、予算があり、数もそんなに多くなければ、あるだけ全部の入門書を買ってしまうというのもよい(もちろんパラパラめくってみて、あまりにひどいものは除く)。ともかく、入門書は一冊だけにせず何冊か買ったほうがよい。その際、なるべく、傾向のちがうものを選ぶ。定評のある教科書的な入門書を落とさないようにすると同時に、新しい意欲的な入門書も落とさないようにする。


p.97

入門書をつづけて何冊か読むことが、その世界に入っていくための最良のトレーニングになる。よくわからないところはとばしてよいからどんどん読みすすむ。この段階では、わからにところをわかろうと努力して考え込むようなことはしないほうがよい。入門書で出てきたわからないことというのは、たいてい著者の説明不足から起きていることであって、別の入門書を読むか、中級書を読めばすぐにわかることがほとんどなのである。


pp.125-126

人にものを問うということを、あまり容易に考えてはいけない。人にものを問うときには、必ず、そのことにおいて自分も問われているのである。質問を投げ返されたときに、「問うことは問われること」という二重構造がはっきり表に出てくる。こわい相手に出会うと、そのうち、どちらが問う者で、どちらが答える者かわからなくなってくる。プラトンの対話編がその典型だろう。


p.135

想像力という点に話を戻すと、ロッキード裁判の法廷に登場した証人の中で、検事に詳細な供述をした証人が、どうしてそんなに詳細に供述ができたのかと問われて、「取り調べの検事さんに、『頭の中で絵を描け』といわれました」と答えた人がいた。
「頭の中で絵を描け」というのは、想像力を働かせるのにいい方法論である。相手の答えを聞きながら、自分の頭の中に絵を描いていく。絵が描ききれない部分があれば、そこを問う。そのとき重要なのは、一つの場面について一枚の絵だけでなく、何枚もの絵を描いていみることである。


p.146

インプットとアウトプットの間、つまり、アウトプットの準備段階が重要である。


pp.146-147

この過程は、酒造りの工程に似ている。酒造りの肝心かなめの行程、つまり、発酵工程は、酵母の手によってなされるのであって、人の手によってなされるのではない。


p.149

待っても何も出てこなかったら、それで終わりである。無理に頭をふりしぼって、何かしゃべったり書いたりすることもあるまい。貧しい頭をもって生まれた我が身の不幸を心ひそかに嘆くにとどめて沈黙を守るのが一番よい。


p.208

まず第一に、読者と自分が共有している共通の前提知識が何であるかを、常に意識しておくことである。認識しておくというより、それは書きながら自分で設定していくものである。


p.212

具体的には、論理学でいう「充足理由律」が満たされているかどうかを確認せよということだ。あることをいうために、それがいえるという充分な理由が示されているかどうかを見よということだ。それをみるためによい方法は、自分が誰かと論争をしている最中なので、スキあらばこちらの弱いどんな部分にでも相手がかみついてくるものと仮定して、もう一度自分が書いたものを読み直してみることである。いっそ論争相手になったつもりで読み直してみよということだ。